ギターワンポイント講座『左手上達エクササイズその1』

今回は運動性能向上を目的としたスポーツに近い観点から左手の技術向上講座の話を進めて参ります。

ギター初級者の皆さんにとって、当面大きな問題となるのが左手の技術向上ではないでしょうか。

よくある問題としては・・・・
1、コードがうまく押さえられない。
2、メロディを滑らかに追えない。
3、弾いているとものすごく左手(特に親指や人差し指)が疲れる。
・・・・等々。

問題1と2は左手のバランスと柔軟性が整い、指板上の配置と移動ルートの整理が出来れば解決します。3は、それらが出来ていない場合よく起こりがちな過度な力みが原因です。「押さえる力が強ければちゃんとした音が出る」というのは大間違いで、どれだけ力を入れようが左手の技術は一向に向上しないのです。

右利きの方が多い世の中ですし、ギター演奏においても左手は苦手に思う方が多いようです。
感の良い方は楽譜(五線譜、タブ譜、ダイアグラム等)を見ていきなりコードを習得できる場合もあるかも知れませんが、普通は「あーでもない、こーでもない」と左手の押さえ方等に悩みながら練習するものです。

コードを上手く押さえられないギター初心者の方が経験者の人や先生に質問した際に、「フレットボードに対して垂直に、指先で押さえましょう」というアドバイスを貰った方は多いのではないでしょうか?

また、綺麗に音が出ない場合には「ギターの胴がある側(右利き構えだと右方面)のフレットの近くを押さえましょう」とアドバイスされた方も多いでしょう。

それらは所謂セオリーとしては、正解です。

それらを知識として理解したとしても、冒頭の問題は発生する訳であります。

バランスと柔軟性が優れた方であればそれらのアドバイスだけで最初の難関はクリア出来るかも知れませんが、普段使いなれない左手で日常生活とはかけ離れた動きを必要とするギター演奏はそう簡単にはいかないのも普通な事です。

うまく行かない方は、少し寄り道して左手のエクササイズを行う等して、バランスを整え柔軟性を向上させてみましょう。

ここではシンプルで効果的な練習として、2種類の半音階とスラー(ハンマリングオン&プリングオフ)の練習を提案致します。

一つ目は下記譜例のように1フレットから左の4本の指を人差し指から順番に置いて音を出し、小指が置かれた形まで弾いたら手のひらごと1フレット高音側へ上がる。小指が12フレットまで来たら今度は予め4本置いた指を小指から順に上げて音を出し、人差指まで弾いたら手のひら毎1フレット低音側に下がる動きを繰り返します。

①弦が終わったら、同じように②弦~⑥弦までを練習しましょう。

さて、次は縦移動を伴って4本ずつ左指を置いていく練習です。
先の練習と同じように1フレットから順番に指を置くのは同じですが、今度は1ポジションで⑥弦から①弦まで順番に上下行する形の練習です。
この練習では左の手首の縦方向の柔軟性向上と弦同士の感覚の把握等の効果が期待されます。
左の親指はポジション移動(1フレット分上下する時)以外あまり動き回らずに、ネックの後ろ側から全体を見守るような立場に居られるとよいでしょう。

さらに縦の移動に大きく関わってくる左の手首の使い方に重点を置いた練習として効果的なオクターブの練習にチャレンジしてみましょう。急がずに左の人差し指が⑥弦と①弦を行き来する際の手首の動きを観察してみましょう。

さて、それらの練習が滑らかにつながって来たら、さらなる練習効果が期待されるスラーの練習を始めましょう。

これらの練習では、左指の進み方としては上記と同じ道筋を辿りますが、音の出し方が全く違います。

英語表記のハンマリングオン、プリングオフという言い方がそのまま表しておりますが、右手で弾いた次の音を左手のみで出す方法として「叩き」と「引っ張り」を活用するのです。

下記譜例の「⌒」で繋がった音符の後ろ側は右手では弾かずに音を出しましょう。
上行の際には叩いて音を出し、下降の時には引っ張りつつ指を離して音を出します。
叩く際には力まずに、一番音が出るポイントを探りながら、先ずはフレットボードから2~4センチくらいの距離を意識して練習するとよいでしょう。(ある程度距離が開いた方が勢いが付けられるので音が出やすい為)
下降の際にはやはり力まずに、指の重みが外れて自然に音が出るようなイメージで、軽く弦を引っ張りつつ指を離します。指を離す際に速やかに脱力して次の動作に備えるようなポジションに戻しましょう。特に小指や薬指を指板の下の方に巻き込んでしまわないように、注意しながら練習しましょう。「速やかに」と書きましたが、急ぐあまり力みが発生しないように注意して、自然な脱力の結果、指がニュートラルな位置に戻るよう、焦らずに丁寧な動きを心がけてみるとよいです。

この練習では指の力のバランス調整と柔軟性の向上により効果が見込まれます。

遠回りのように感じるかも知れませんが、これらの練習を繰り返し行って自身の左手の機能を知り、能力を向上させてから最初に挙げた問題に挑んでみると・・・思った以上に沢山の問題が解決しているかも知れません。

他にも効果的な練習や楽曲は沢山存在します。
今回提示した練習に飽きてしまった方は探してみるのもよいでしょう。

練習が進んで技術が身について来れば、綺麗な音が出せる事が普通になり、弾けなかったフレーズが弾けるようになり、コードを押さえる際に苦労をする事が無くなってくるでしょう。

急がば回れという言葉がしっくりくる例です。

自由な左手の技術を体得して、自在に演奏を楽しみましょう。

直接レッスンを受けたい方は何時でもお気軽に秋葉原、神田から通えるTsuneギター音楽教室にお越し下さい。

楽しいギターレッスンを準備してお待ちしています。